■忙しい人のための要点まとめ
・パーソントリップ調査:人々の移動実態を把握するための大規模なアンケート調査。
・活用分野:都市交通計画、都市開発・再開発、環境対策、防災計画など。
・課題:調査頻度の低さ、高コスト、回答者の負担によるデータ精度の問題。
・人流データによる補完:準リアルタイムかつ高精度なデータで課題を解決。
・提供サービス:人流データ活用サービスで支援。
都市の発展や交通計画を効果的に進めるためには、人々が日常的にどのように移動しているのかを正確に把握することが重要です。そのために活用されているのが「パーソントリップ調査」です。本記事では、行政が行うパーソントリップ調査の概要や目的、活用方法、そしてその課題と、クロスロケーションズの人流データがどのようにそれを補完できるかについて解説します。
パーソントリップ調査とは
パーソントリップ調査(Person Trip Survey)とは、都市圏における人々の移動実態を詳細に把握するための大規模な調査です。具体的には、「どのような人が」「いつ」「どこからどこへ」「何の目的で」「どのような交通手段を使って」移動したのかを明らかにします。この調査は、行政が行う統計調査として、都市計画や交通政策の立案において基礎的なデータとして活用され、交通需要の予測や公共交通の改善、新たな道路整備の計画などに役立てられています。
パーソントリップ調査の目的と歴史
目的
パーソントリップ調査の主な目的は、都市内の人々の移動パターンを把握し、交通網の整備や都市計画に反映させることです。具体的には、以下のような目的があります。
- 交通需要の予測:将来の交通量を予測し、道路や公共交通機関の適切な整備計画を立案するために活用されています。
- 交通政策の立案:渋滞緩和や公共交通の利便性向上など、効果的な交通政策を策定するために活用されています。
- 都市計画の支援:商業施設や公共施設の最適な配置を検討し、都市の発展を促進するために活用されています。
歴史
パーソントリップ調査は、1960年代から日本の主要都市で実施され始めました。初めて本格的に行われたのは1967年の広島都市圏で、その後、約10年に一度の頻度で全国各地の都市圏で実施されています。この調査は、都市交通計画の基盤として長年にわたり重要な役割を果たしています(注1)。
調査方法と収集されるデータ
パーソントリップ調査は、大規模なアンケート方式で実施されます。対象地域の住民に対して、紙またはオンラインでアンケートを配布し、指定された1日における全ての移動について詳細な情報を提供してもらいます。これにより、個々の移動パターンを詳細に把握します。
収集されるデータ
- 個人属性情報:年齢、性別、職業、世帯構成などの基本情報を収集します。これにより、どのような属性の人がどのように移動しているのかを分析できます。
- 移動情報:出発地・到着地、出発時刻・到着時刻、移動目的(通勤、通学、買い物など)、使用した交通手段(徒歩、自転車、車、電車、バスなど)を詳細に記録します。
- 移動経路:経由地や乗り換え情報など、移動の詳細なルートも収集します。
パーソントリップ調査の活用事例
パーソントリップ調査で得られたデータは、都市計画や交通政策をはじめ、さまざまな分野で幅広く活用されています。以下に、その具体的な活用事例とその重要性について解説します。
都市交通計画
人々の移動経路や交通手段を詳細に把握することで、新たな道路の建設や拡幅、公共交通機関の路線配置やダイヤの最適化など、効果的な交通インフラ整備が可能になります。例えば、交通渋滞が多発する時間帯や地域を特定し、その原因を分析して対策を立案できます。また、バスや鉄道の利用状況を分析し、公共交通サービスの充実や利便性向上にも役立てられています。
都市開発・再開発
人々の移動パターンや滞在場所を把握することで、商業施設や公共施設の最適な立地選定が可能です。例えば、多くの人が訪れるエリアに新たな商業施設を誘致して地域経済を活性化できます。また、老朽化したエリアを特定し、住環境の改善やコミュニティ再構築に役立てます。さらに、将来の人口動態や交通需要を予測し、持続可能な都市づくりの長期的ビジョンを策定できます。
環境対策
移動手段や距離を分析し、自動車利用が多いエリアを特定して、交通量削減によるCO2排出抑制策を立案できます。公共交通や自転車の利用促進のインフラ整備、カーシェアリングの導入支援などが挙げられます。また、歩行者の動線を把握し、歩道拡幅や歩行者天国の設置など、歩行者優先の街づくりを推進できます。これにより、環境負荷を軽減し、住民の健康増進や生活の質向上につながります。
防災計画
移動経路や滞在場所を把握することで、災害時の避難行動を予測し、適切な避難ルートや避難所配置を計画できます。通勤・通学時間帯に多くの人が利用する道路や交通機関を特定し、災害時に安全かどうかを評価します。また、支援が必要な人々の移動パターンを分析し、支援体制の整備に活かせます。さらに、避難所の収容能力や物資配備計画の基礎データとしても活用できます。
パーソントリップ調査の課題
パーソントリップ調査は、これまで紹介した通り、都市計画や環境対策、交通政策などさまざまな立案において重要なデータを提供していますが、そこにはいくつかの課題が存在します。
まず、調査頻度の低さが挙げられます。パーソントリップ調査は約10年に一度の頻度で実施されるため、最新の移動状況や社会の変化をリアルタイムに反映することが難しいという問題があります。現代社会は急速に変化しており、新たな移動手段の普及や生活様式の変化(例えば、テレワークの増加やシェアリングエコノミーの拡大)に迅速に対応しづらい点が指摘されています。
次に、コストと時間の負担が大きいことも課題です。大規模なアンケート調査であるパーソントリップ調査を実施するには、膨大な時間と費用が必要となります。調査の計画段階からデータの収集、集計、分析に至るまで長期間を要し、その間に社会情勢が変化する可能性もあります。そのため、迅速な意思決定が求められるビジネス環境や行政施策においては、タイムリーなデータ提供が困難となる場合があります。
さらに、回答者の負担も無視できない問題です。詳細な情報を収集するために、回答者には自身の移動経路や移動時間、移動手段、目的などを正確に記録してもらう必要があります。しかし、これらを正確に思い出して記入するのは容易ではなく、回答に対する心理的・時間的負担が大きくなります。その結果、回答率の低下や回答内容の精度にばらつきが生じる可能性があります。特に記憶に頼る部分が多いため、データに誤差が生じやすく、分析結果の信頼性に影響を及ぼす懸念があります。
これらの課題から、パーソントリップ調査は重要なデータソースである一方で、最新性や効率性、データ精度の面で改善の余地があると言えます。
人流データによるパーソントリップ調査の補完
パーソントリップ調査の課題を解決するために、近年注目されているのが人流データの活用です。人流データは、スマートフォンの位置情報を匿名化・統計化して収集することで、従来の調査では得られなかった詳細な移動状況を把握できます。これにより、最新の社会情勢や人々の移動パターンを迅速かつ正確に捉えることが可能です。以下、人流データの特徴について紹介します。
リアルタイム性
スマートフォンの位置情報を匿名化・統計化して収集するため、最新の人々の移動状況を素早く把握できます。これにより、社会情勢や季節要因による人々の移動変化を即座に捉えることができます。
高頻度・高精度なデータ
日々のデータ収集が可能で、時間帯別や日別、週別など細かな分析ができます。GPS情報を活用するため、移動経路や滞在場所を高精度で把握できます。
コスト効率
大規模なアンケート調査に比べて、迅速かつ低コストでデータを取得できます。調査の計画や回答者への依頼が不要なため、時間と費用の大幅な削減が期待できます。
これらの特徴により、人流データはパーソントリップ調査の課題を効果的に補完する手段として期待されています。
クロスロケーションズの人流データ活用による支援
クロスロケーションズでは、高精度な人流データを提供し、都市計画や交通政策、マーケティング戦略の策定をサポートしています。従来のパーソントリップ調査では難しかった準リアルタイムな都市における人々の移動状況や詳細な人流パターンを把握することで、的確な意思決定を支援しています。当社のLocation AI Platform®(LAP)やLocation Data Service(LDS)を活用することで、さらに深い分析と高度なデータ活用が可能です。
※注1.パーソントリップ調査の歴史:国土交通省パーソントリップ調査より
まとめ
パーソントリップ調査は、都市計画や交通政策において長年にわたり重要な役割を果たしてきました。しかし、コロナ禍を経てインバウンド(訪日外国人)市場が急速に拡大する中で、その調査方法にはいくつかの課題が浮き彫りになっています。具体的には、調査頻度の低さや高コスト、回答者の負担などが挙げられます。
クロスロケーションズが提供する人流データは、これらの課題を効果的に補完します。最新かつ高精度な位置情報データを活用することで、従来のパーソントリップ調査では得られないリアルタイムな移動状況や詳細な人流パターンを迅速に把握することが可能です。これにより、都市の未来をより良くするための的確な意思決定を支援します。
関連情報
クロスロケーションズのLocation AI Platform®(LAP)やLocation Data Service(LDS)を活用することで、より深い分析と高度なデータ活用が実現できます。これらのサービスを通じて、都市計画やマーケティング戦略の最適化を図り、持続可能で活力ある都市づくりを共に推進していきましょう。
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